お盆の日記
わたしの腕は昨日
3歳の子に刺されて死んでしまった
「お墓にいれてください」
と頼んだら
「燃やして骨にしないといけないんだよ」
と言われた
おじいちゃんが死んだとき
その子はまだ1歳にもなってなかった
わたしが死んだら焼いてお墓に入れてあげてください
その子は
「死んだらもう生き返らないんだよ」
と言った
やっぱり
現代の子は
倫理観がおかしくなってる
なんてメディアのいってたことは
嘘だったんだなあ
と思った
わたしが死んだら焼いてお墓に入れてあげてください
フィギュアが持ってた柔らかく尖った剣が
わたしの腕に刺さって
小さな跡がついた
「これが致命傷になりました」
と言ったら
致命傷の意味はわからないみたいできょとんとしてた
おばあちゃんは
5日前に微熱が続いて
おじいちゃんがこの後お墓にかえっていくときに
いっしょに連れていかれちゃうんじゃないかと心配してるらしい
弟は前よりもおばあちゃんと仲良くしている
おばあちゃんは
こんなこと言ったらなんだか
おわっちゃう感じだから
言ったことないんだけど
おじいちゃんが死んでからどんどん
病気で入院してたときよりもなんだか諦めモードに入ってて
なんだか漂ってるものが違くて
この家は
なんだかいつのまにそういうふうなの
新しいものがたくさん建っていた
ずいぶん田んぼが減った
田んぼは涼しい風が吹くから好きなのに
錆びたものはすぐに壊されて
ちゃんと新しいものが建つ
みんなちゃんと新しくなっている
錆びたものはわたしの記憶の中にしかない
錆びそうなものはわたしが覚えておくしかない
この家はみんななんだか全盛期ではなくなったようで
でも毎日おいしいものを食べている
電車で通り過ぎた
あの家々の一部
いちぶ
今日は
おじいちゃんをお墓にかえしに行く日